「お茶の間」復権への 願いを込めて

 

守り伝えたい四百年の伝統

 朝日焼は慶長年間、ここ宇治の地に始まり、以来、宇治の土を使ってお茶にまつわる器や道具を作ってきました。朝日焼の陶磁器の特徴は、宇治のお茶文化に育まれた繊細な匠の技が凝縮されていること。たとえば、急須の茶漉しは、素地に直接、一番下まで一個ずつ穴を空けているのですが、これはお茶の最もおいしい部分が急須に残らないよう、最後まで注ぎ切れるようにするためです。こんな面倒と思えることも、お茶どころだからこそ為されてきたのでしょう。
 実は僕は大学卒業後、しばらくサラリーマンをしていました。離れてみて初めて、朝日焼の研ぎ澄まされた美や技の素晴らしさを知った気がします。そしてそのことで、僕は家業を継ぐ決心をしました。

 

「器箱」で和みのひとときを

 今年、茶筒の職人と家具職人とのコラボレーションで「器箱」を制作・発表しました。これは、かつてはどの家庭にもあった茶櫃に代わるもの。中には急須、茶碗、湯冷まし、茶筒をセットしました。急須は朝日焼の特徴である清らかで美しく、持ち手のない宝瓶といわれるもので、それを今の時代に合うよう使い勝手を考え、茶碗とともに煎茶にも玉露にも使える大きさにしています。
 たとえ一週間に一度でも、ちょっといいお茶の時間を持ってほしい。それが僕達の願い。そしてお茶を味わい、人の集う「茶の間」を、日本人の生活に取り戻すことができれば、これほどうれしいことはありません。
(松林佑典さん)
 朝日焼の工房で、僕は硝子作家として、やはりお茶道具を中心に制作しています。「ご家庭でおいしいお茶をじっくり味わう時間を持っていただきたい」、という思いは兄と同じ。志しを同じくする者同士、兄弟展を開いたり、そこでお茶のいれ方講座なども行っています。兄とともにこれからも、宇治の地から、お茶のある生活の豊かさを、道具や器に寄せて発信していきたいと思っています。
(松林俊幸さん)

 

profile

まつばやし ゆうすけ(兄)
朝日焼十五世窯元・松林豊斎氏の長男。1980年生まれ。同志社大学卒業後、一般企業に就職。その後、京都府陶工高等技術専門学校に学び、現在、父のもとで修業を重ねながら、茶道具を中心に制作。

まつばやし としゆき(弟)
十五世窯元の次男。1983年生まれ。東京の美術学校を卒業後、工房に戻り、硝子の茶道具を制作している。

 

〔vol.11 冬号 掲載〕

 


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