茶の湯で世界に伝えたい日本の文化と心

 

一服のお茶に心を込めて

 「なぜ茶席では茶碗を回すの?」茶道を習い始めた頃、師匠である祖母に私がしたのと同じ質問を、日本文化を体験する外国人向けの講座でよく受けます。茶葉を育てた人、茶碗を作った人、今、お茶を点ててくれた人、一碗の中には多くの人の心が入っている。正面からぐっと飲むのでなく、少しよけるのはリスペクト(尊敬)であり、ハンブル(謙虚さ)なのですと。最初は足を投げ出し、床の間に腰かけていた方たちが、居ずまいを正して聞き入ってくれます。

 私は、文化とは、言葉を介し、顔と顔を合わせる中で豊かにはぐくまれるものだと思っています。茶の湯は、今、注目の「おもてなしの文化」そのものです。招かれた人も文化のステージに上がり、亭主(茶事を主宰する主人)と会話しながらお茶をいただき、客どうしも言葉を交わします。初対面の場で、人と人との縁を結んでくれる茶道は、世界でもまれな文化なのです。

 

お茶で世界に広がる人の縁・文化の縁

 お茶の歴史や作法をお弟子さんに紹介する時に使っていた手作りのカードが、 (有)ワックジャパンさんによってかるた形式になり、絵はプロの漫画家によるイラスト、絵札と読み札に英語の説明や訳が加わりました。これを授業で使ったところ、生徒たちから素朴な声が上がりました。

 たとえば、「ひ よけして 苦み成分 取り除く」…日よけをしないとどうなるの?「ね む気取る 一服のお茶 座禅組む」…目を覚まさせるって、薬なの?という具合です。芽生えたお茶への関心を大切にしてもらいたいと、今、そんな疑問を解説する冊子を準備中です。題して「知れば話したくなる茶の湯の話」。本当ですよ。

 年度当初は、「日本文化って?」と聞かれても言葉につまっていた生徒たちが、学習を終え、「日本に生まれて良かった」と胸を張って留学に旅立つ姿に頼もしさを覚えます。茶の湯が日本の心を伝えるかけ橋になってくれることを願っていますし、かるたや冊子がその一助になれば幸いです。

 

profile

藤井 多恵子(ふじい たえこ)
立命館宇治中学校・高等学校非常勤講師/茶道裏千家師匠

1943年生まれ。茶道裏千家インターナショナル所属。立命館宇治校のほか、㈲ワックジャパン、和歌山大学観光学部で日本文化の講師を務める。城陽市在住。

 

〔vol.15 冬号 掲載〕

 


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